労働基準法上、社員数が10人以上の会社は就業規則の作成が義務付けられています。
10人未満の場合、「うちの会社に就業規則なんて必要ないよ」という経営者も多いのではないでしょうか。
それでも私は、小さな会社こそ就業規則の作成を勧めています。
一人でも従業員を雇用している経営者の方は、会社のために、そして経営者ご自身のために一度立ち止まって就業規則の作成を検討してみてはいかがでしょうか。
※とある棚田より
就業規則がないと、労務トラブルでピンチを迎えます
「解雇であるならば、就業規則を見せてください」
ある従業員を解雇し、従業員側の弁護士からそう言われたらどうしますか?
現行の法律上、就業規則などで具体的な事由に該当する場合でなければ、従業員を解雇することは非常に難しくなっています。
そうでなければ「不当解雇」として、解雇の取り消しという結果を迎えることなることもあるでしょう。
未払残業代、解決金、弁護士費用など、解雇に関する裁判に巻き込まれると、会社の経営に大きなインパクトを与えるほどの大きなお金を失う恐れがあります。
特に小さな会社であれば尚更です。
そのためにも、たとえ小さな会社でも、会社のルールを就業規則で明確にしておくべきなのです。
労働基準法上の絶対的記載事項とは?
就業規則には「絶対的必要記載事項」という就業規則作成上絶対に必要な事項があり、それ以外は職場に必要な取り決めを定める場合にのみ記載が必要な相対的必要記載事項という事項があります。
絶対的必要記載事項は、下記の内容になります。
………………………………………………………
1.始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に
分けて交替に就業させる場合の就業転換に関する事項
2.賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の
締め切り及び支払い時期ならびに昇給に関する事項
3.退職(解雇事由含む)に関する事項(退職手当を除く)
………………………………………………………
これに対して相対的必要記載事項の内容は下記のとおりです。
………………………………………………………
1.退職手当に関する事項(適用者の範囲、退職手当の決定、計算、支払の
方法・時期)
2.賞与等・最低賃金額について定める場合には、これに関する事項
3.食費・作業用品等を負担させる場合には、これに関する事項
4.安全・衛生に関する事項について定める場合には、これに関する事項
5.職業訓練に関する事項について定める場合には、これに関する事項
6.災害補償・業務外の傷病扶助について定める場合には、これに関する事項
7.表彰・制裁について定める場合には、これに関する事項
8.全各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
………………………………………………………
なお、就業規則は書き方や書式などについては特に定められておりません。
インターネットで就業規則の雛形を探してみると100条を超える内容のものが出てくることがあるかもしれませんが、従業員が数人規模の小さな会社であれば、20条前後の内容で十分対応できると思います。
具体的に記載した方がよい事項とは?
絶対的必要記載事項、ならびに相対的必要記載事項は上記のとおりですが、具体的にはどんなことを記載しておいた方がよいのでしょうか。
少なくとも下記5つの内容については、就業規則に具体的な取り扱いを記載しておいた方がよいでしょう。
①退職・解雇・懲戒に関する具体的事項
→これを定めておけば、やむなく従業員に辞めていただく場合、もしくはこれ以上仕事を続けて欲しくないといった場合に「不当解雇」とされるリスクが少なくなります。
具体的に定めていないと、双方の話し合いで解決せざるを得ず、その場合は感情的になる場面も多く出てくることになるでしょう。
②始業就業時間・労働日に関する具体的事項
→残業時間の管理が出来ていないと、退社後に残業代未払いなどの訴えも出かねません。
時間外の業務を社長の許可制度にするなど、残業時間をしっかり管理していれば、残業代に関するリスクを極力防ぐことが可能となります。
③服務規律に関する具体的事項
→服務規律とは、社長が会社経営を行っていくうえで、従業員に日常から守ってもらいたいことになります。
社長が頭の中で思っていても、それは従業員には届いていないかもしれません。
具体的には上記②で示した残業の社長許可制や、インターネットの私用を禁じたパソコンの使用規定、遅刻・欠勤に関する罰則などがあげられます。
服務規律は社長が望む風土や社風を作っていく上でのベースにもなりうるものです。
小さな会社にとっては会社の独自性が発揮できるものでもあります。
④休暇に関する具体的事項
→慶弔休暇や結婚に伴う休暇など、その休暇を有給にするか無給にするかは会社で定めることができます。
従業員が給料を貰えるものだと思って休暇をとったのに給料が減額されていた、などの不信やトラブルをまねかないように、予め取り決めをしっかり定めておいた方がよいでしょう。
⑤賃金に関する具体的事項
→賃金の構成、基本給、昇級、賞与、退職金など、お金に関する規定は従業員がもっとも気にするところです。
大きなトラブルや不信を防止するためにも、これらの規定はしっかり定めておいたほうがよいでしょう。
人件費は小さな会社にとって大きな割合を占める経費となります。
また、仕事を円滑に進めていくためにも、従業員のモチベーション維持も重要となります。
お金と人のバランスをしっかり管理し、安定した経営を継続するためには、これらの規定をしっかり定めておく必要があります。
まとめ
小さな会社の経営は、99%社長で決まります。
会社がうまくいってないな、従業員が言うことを聞いてくれないな、そう感じたら社長自身に問題がある可能性が高いのです。
就業規則を、社長の想いを伝える材料の一つとして、それを利用し社長自身が今以上に成長することで、従業員も成長し、そして会社も成長していくのではないでしょうか。
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【編集後記】
アメリカのトランプ政権が、税制改革案の一つとして法人税の税率を35%から15%へと大幅に引き下げることを公表しました。
この低税率で、過去と同程度の税収を確保するのは、現実的にはかなり厳しいと思われます。
しかし、こういった通常は実行までしない(できない)ことを、行動に移してしまうのがトランプ大統領です。
この税制改革案がもし議会で通るようであれば、世界的にも大きなインパクトを与えることになるでしょう。
現在、世界各国で複雑なスキームによる課税逃れ(節税?)が、大企業を中心に行われております。
利益の源泉地が不透明になりつつある現代社会では、課税側と納税側の理念のズレがますます加速していくことになるでしょう。
【昨日の心・技・体】
心:読書(フリーで仕事を始めたらまっさきに読む経理・税金・申告の本/笠原清明)
技:なし
体:@ティップ.クロス TOKYO 渋谷
・パワーラッシュ+F.method
・前腕トレーニング×2セット